がんのキュアとケア

がんのキュアとケアがんに苦しんでいる人の肉体的な苦痛のキュアだけでなく、死の恐怖や不安をやわらげる精神的なケアが求められています。

 

がんの特殊性から、最近では患者はもとより、家族や医師らも含めた精神的なサポートの必要性が強調されるようになりました。

 

患部への直接的な治療であるキュアだけでなく、患者への精神的な支援であるケアによって、不安や恐怖などさまざまな心理的ストレスをとり除こうという取り組みが、少しずつではありますが、行われるようになってきました。

 

患者に及ぼす精神的な影響が極めて大きいがんという病気の特殊性から、がんの心理的な側面を解明しようと生まれたのが、サイコオンコロジーとよばれる分野です。

 

アメリカの精神科医師であるJ・ホーランドらが提唱したもので、がんの診断や治療が患者や家族、医療スタッフにどのような精神的な影響を及ぼすか、それらにどう対処し、あるいは介入するかを研究するものです。

 

また逆に、患者の心理状態や行動が、がんの治療効果や生存率などに与える影響についても研究が進められ、近年の精神神経免疫学の発展に伴って、心理状態が、がんの発生や進行に関与するメカニズムの解明が試みられています。

 

キュアからケアへ

キュアからケアへ

治癒(キュア)の見込みがなくなった末期がんの患者に対して、いかにして看護(ケア)していくかは、大きな問題です。

 

死を目前にしたがん患者のQOLを考える場合、「患者がやり残した仕事をやり遂げること」を重視する必要があります。やり残した仕事といっても、周囲からみると大したことではない場合もあるかもしれません。しかし、患者本人にとつては、それが重大な問題となっているものです。

 

家族との対話、友人からの励まし、親しい人と楽しかった過去を語り合う、信仰によって来世への希望を持つ、といったことを望む患者も少なくありません。

 

また、孤独や絶望感を緩和するために、家族が手をじっと握ってあげるだけでも、大きな支えになります。

 

末期がん患者のケアに専念する医療施設であるホスピスが日本にも誕生しています。家族との食事や会話を楽しむことを重視した「緩和ケア」病棟を持つ病院も登場しました。

 

一方、自宅で最期を迎えたいと希望する患者も少なくありません。家族の負担が重くなるので難しい面もありますが、食事や排泄の世話を訪問看護に依頼するなどして、対応する方法もあります。

 

がん告知

アメリカでは、治癒の見込みに関係なく、ほとんどの場合、がんの告知が行われていますが、日本ではまだそこまでの社会的合意はできていません。医師が治癒の確率が高いと判断したケースにおいては、積極的に告知するようになってきましたが、家族には知らせても、本人には知らせないというケースがまだまだ多いようです。

 

告知する場合は、患者の性格、死生観、宗教観、家庭や社会的立場を考慮したうえで、医師が判断しています。告知の仕方もいろいろあり「完治は見込めないが、これ以上は悪くならないように治療しましょう」といった日本独特の間接的な表現が使われることもあります。
告知を受けたがん患者の家族は、患者の不安、悲しみ、恐怖、孤独といった感情に十分配慮し、最期までサポートしていく姿勢が大切です。

 

早期発見が大切です
がんは今や必ずしも不治の病ではありません。早期に発見し、適切な治療を受ければ、ほぼ100%に近い確率で完全治癒の見込めるものもあります。定期的に検診を受けることと、初期症状があったら、医師の診察を受けることが大切です。

 

死と向き合うということについて

 

がんの心理学記事一覧

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がんの病状が次第に進行してくると、食事や排便など身のまわりのことも自力でできない場面が増えてきます。家族や介護者に迷惑をかけるストレスや、自分のことを自分でできない敗北感などが患者を打ちのめします。進行期の特徴的な傾向として、医師や家族に見捨てられることへの不安が高まり、患者が従順となることが報告されています。その一方で、死に対する防衛機制として、がんなど取るに足りないと強がるような言動が目立ちま...
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小児がんの子どもに対しては、それぞれの子どもに合ったケアをすることが大切ですが、特に年齢や発達段階に応じた対応が求められます。幼児期の場合、がんの治療やそれに伴う制限から、子どもは依存心を増したり、逆に反抗的になったりしますので、両親ができるだけこれまでどおりに接していくことが病気への対応を容易にします。学童期の場合、学校への出席が不規則になるため、友人関係がうまくいかなくなったり、成績が下がった...
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1950年代に抗がん剤が開発され、がんの治癒率は飛躍的に向上しました。結果、がん=死という人々の意識が変化し、アメリカでは1960年代にがんを告知する風潮が広がりました。同じころ、イギリスに最初のホスピスが設立され、治療効果の見込めない患者に対するケアが注目され始めました。心とからだが互いに影響し合って健康をつくりあげている、という考え方は、現在では常識ですが、以前は宗教的な色彩が濃く、認知度も低...
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